2015年5月17日日曜日

大山レンゲ

 五月八日、拙宅の庭の一隅に大山レンゲが咲いた。
もう、五十有余年前に成ろう。徳島県境に近い白髪山(1469.55 m)に二つ年上のY先輩と登った。頂上までは、未だほど遠い藪の中に迷い込み、やっと藪を潜り抜け頂を仰ぎ見た。そこに、せいそなそれは清楚な白い花が私をみていた。これがこの花と初めての出会いであった。この花の名前など知る由もない私は、先輩に尋ねた。先輩は事も無げ、即座にこれは「深山侘助」だ、と答えて下さった。侘助って藪椿のことですよね・・・!、と畳みかける。そうだ侘助の白だ、と即答。以来五十有余年先輩の言葉を信じ込んでいた。その先輩は、先ほど私に一言の言葉を遺さぬまま旅立った。
 昨年春早くに、妹から貴男が好きそうな花だから、と三尺程の苗木をもらった。その苗木に、わずか一年で花を付けるとは、思いのほかだった。しかも、あの忘れもしない深山侘助が我が庭に咲く、気持ちは爆ぜった。カメラに納めプリントし、妹に去年貰った苗木に深山侘助が咲いた、と悦に入って見せた。
 何というこれは大山レンゲだという。改めて花を覗く、先輩がやっと判ったかとほくそ笑んでいた。